こんにちは。歯科医師のにこです。
今回は「これまでの歯医者ではむし歯はないと言われてたのに、違う歯医者にいったらむし歯が沢山あると言われた!どうなってるの!?」というケースについて解説してきます。
特に、かかりつけの歯医者の定期健診を欠かさなかった上でのことなら困惑するのももっともです。
しかし歯医者目線でいうと、こういったことは何度も経験してきました。
そこでこの記事では
1、なぜこういったことが起こるのか
2、そのときどう対応すればよいか
以上について説明したいと思います。歯医者のちょっとした裏側もお話しますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
そもそも治すべきむし歯って?
まずはむし歯ってどんなものかを解説します。
う蝕治療ガイドライン 第2版 ― 日本歯科保存学会(2015年6月)では、以下のような場合には歯を削る必要性を挙げています。ここでは一般向けの表現にしています。
1) 穴があいている
2) 食べ物がひっかかりやすい
3) 本人が見た目を気にしている
4) レントゲンで穴がみえる
5) むし歯リスクのある体質・生活習慣
(参考)http://www.hozon.or.jp/member/publication/guideline/file/guideline_2015.pdf
ガイドラインがあるのに、なぜ歯科医院によって違うのか?
ここでは、歯科医師の問題そして歯科医院(経営)の問題とを分けて紹介したいと思います。
歯科医師の問題
1、歯科医師によって判断基準に差がある
さて、歯が黒くなっていても必ずしも治療する必要はありません。
歯が黒くなっていても、穴ができておらず、本人が見た目を気にしていなければ必ずしも治療する必要はないということがガイドラインでも示されています。
こういった穴になっていない歯の色調変化は初期虫歯といい、しっかり予防をすれば治療せずともそれ以上進行しない可能性が十分あります。
しかし、この初期むし歯についての考え方が歯科医師によって異なります。
歯科医師の価値観・判断基準に基づいて治療の提案をするので、それが前医と極端に違うと混乱が起きることになります。
以下に積極派と慎重派の歯科医師を挙げました。どちらかの意見が間違っているとは言えないと思います。
初期むし歯治療に積極的なタイプ
初期むし歯のように見えていても、実際に削ってみると内部でむし歯が進行しているケースもあります。
そこで、「初期むし歯も含めたすべてを治療する」という方針の歯医者もいます。
初期むし歯治療に慎重なタイプ
初期むし歯は進行しない可能性があります。にも関わらず、むし歯を治療した詰め物は必ず劣化します。
10年・20年後には再治療が必要になるという事実を踏まえ、歯を削る判断に極めて慎重な歯医者もいます。
2、歯科医師の経験・技量の差
この「経験の差」というのは問題です。
前医が「むし歯を見逃していた可能性」というのもあり得ます。
同じレントゲンを見ても、むし歯を見つけられる歯科医師とできない歯科医師がいます。
「むし歯の黒さ」と「単なる着色」の明確な区別は非常に困難です。
発見が困難なむし歯の場合、歯科医師の経験や技量の差でむし歯の有無が変わってしまうこともあります。
歯科医院(経営)の問題
ここからは歯医者の裏側のお話になります。
むし歯は削らなきゃお金にならない
歯医者が患者さんからお金をもらうためには「治療」が必要です。
つまり「初期むし歯は治療の必要がない」ことを時間をかけて丁寧に説明してもお金になりません。
時には初期むし歯にも関わらず自費のセラミックを勧める歯医者もあります。
勤務医の歩合制
勤務医は歩合制を選ぶこともあります。つまり売り上げをあげれば給料が増えるシステムです。
そういった場合、報酬の高い自費診療や、治療の必要のない歯まで治療を勧める歯科医師がいることも事実です。
結局どうすれば良いのか?
情報共有と意思表示
急にむし歯があると言われても、じつは全てを治療する必要はないのかもしれません。
初期むし歯について、すぐに治療するか、それとも治療の必要性が明確になる時点まで経過観察するかは患者さんと歯医者さん双方の価値観次第となります。
本来、歯医者は患者への説明にしっかり時間を割くべきですが、説明ではお金がもらえないという経営上の問題もあります。
そうであればそのむし歯が治療不可欠な状態なのか、経過観察可能なのか、進行のリスクは高いのか、患者さんと歯医者さんでしっかり情報共有をすることが重要です。
自分自身の体の状態をしっかり把握した上で、歯医者さんの提案を参考に、最後はどうしたいかしっかり意思表示と決定をする。
これらを意識すれば、満足感の高い医療が受けられるでしょう。
やっぱり定期検診
いくら厳密に診査しても極小のむし歯は歯医者でも見つけられない場合があります。ある一時点で治療の必要性の有無を判断するのは難しい場合があるということです。
黒くなった初期むし歯が治療しなければならないむし歯へと進行するかどうかは、患者さん自身のその後の習慣の改善にも依ります。
いずれにせよ年に1度か2度検診を行えば重症化する前に治療することができます。つまり全ての虫歯を治療しても、ある程度経過観察の初期虫歯を残しても、どちらにしろ定期健診の重要性は変わらないということです。
まとめ
・初期むし歯は必ずしも治療する必要はない
・初期むし歯について積極的に治療する歯医者と慎重な歯医者がいる
・歯医者はむし歯を削らないとお金をもらえない
・むし歯の診断について説明を十分にうけ、お互いの価値観を共有した上で治療をすすめるか決定する
・いずれにしても定期検診が重要
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