【リステリンの危険性を考える】歯科医師のわたしがリステリンを使わない理由

マウスウォッシュ
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こんにちは。歯科医師のにこです。

今回はマウスウォッシュ として有名な「リステリン」について考えていきます。

「リステリン」はオーラルケアグッズとして非常に人気が高い商品です。

実際、日本で販売されているマウスウォッシュの中でもダントツに高い殺菌力を誇ります。

しかし歯科医師である私は「リステリン」を使用していません。

今回の記事ではその理由について述べていきたいと思います。

そこで今回の記事は

・リステリンについて

・リステリン公式HPの「長期使用に関する安全性」についての疑問

・わたしがリステリンを使わない理由

上記について、わたしの見解を説明したいと思います。

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リステリンとは?

リステリンは、4 つのエッセンシャルオイルズ(チモール,ユーカリプトール,メントール,サリチル酸メチル)をアルコール溶媒で混ぜたものです。

リステリンのプラークと歯肉炎に対する効果は数多くの長期臨床研究によって報告されており、米国でプラークと歯肉炎に対する効果がある洗口剤としてADA の認可を受けています

リステリンの安全性に関する疑問

リステリンの公式HPの「リステリン® 抗菌性洗口液・液体歯磨きの安全性」のページにおいて、長期使用における安全性を論文を根拠に説明しています。内容は以下の通り。

長期間使用における安全性

  • ドライマウスの起因とはなりません2-4
  • 口腔内細菌叢の正常なバランスを崩しません3,4
  • 長期間使用しても、耐性菌が発生しません3,4
  • 歯牙の着色や歯石の沈着の有意な原因になりません5-8

アルコール含有の洗口液は、ドライマウスとの因果関係はありません

臨床試験において次の結果が明らかになりました:

  • 安全性:口腔乾燥症の患者様へ2
  • 優れた忍容性、口腔粘膜を乾燥させず、唾液流量を減らすことはありません2
  • 唾液流量または患者が報告するドライマウスの感覚について、アルコール含有の洗口液とノンアルコールタイプの洗口液の群で著しい差は認められませんでした3
  • アルコールを含有するエッセンシャルオイル配合洗口液は、ノンアルコールベースの塩化セチルピリジニウム(CPC)洗口液と比較して、有意な唾液流量の減少や口腔乾燥の訴えは認められませんでした4

アルコール含有の洗口液は、口腔癌との因果関係はありません

臨床試験において次の結果が明らかになりました:

  • 口腔癌との有意な関連はありません5-8
    • FDAの分科委員会は7つの症例対照研究を調べ結論を出しています: “アルコール含有洗口液と口腔がんの因果関係をデータが証明していない…”5
    • アルコール含有洗口液は、口腔咽頭癌のリスクを高めません6
    • 洗口液の使用(特にアルコール含有洗口液)と口腔がんの関連は、疫学的根拠により証明されていません7
    • アルコール含有の洗口液の使用と口腔癌リスクには関連がありません8

*1 ブラジル、日本、タイ、英国、米国における分析対象患者の自己報告データに基づく(N=4134)。2015年、J&J調べ

出典:1. Data on file, Johnson & Johnson Consumer Inc. 2. Fischman SL, Aguirre A, Charles CH. Use of essential oil-containing mouthrinses by xerostomic individuals: determination of potential for oral mucosal irritation. Am J Dent. 2004;17(1):23-26. 3. Kerr AR, Katz RW, Ship JA. A comparison of the effects of 2 commercially available nonprescription mouthrinses on salivary flow rates and xerostomia. Quintessence Int. 2007;38(8):e440-447. 4. Kerr AR, Corby PM, Kalliontzi K, McGuire JA, Charles CA. Comparison of two mouthrinses in relation to salivary flow and perceived dryness. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol. 2015;119(1):59-64. 5. Food and Drug Administration. Oral health care drug products for over-the-counter human use; antigingivitis/antiplaque drug products; establishment of a monograph; proposed rules. Part III. Federal Register. 2003;68(103):32232-32287. 6. Cole P, Rodu B, Mathisen A. Alcohol-containing mouthwash and oropharyngeal cancer: a review of the epidemiology. J Am Dent Assoc. 2003;134(8):1079-1087. 7. La Vecchia C. Mouthwash and oral cancer risk: an update. Oral Oncol. 2009;45(3):198-200. 8. Boyle P, Gandini S, Boffetta P, Negri E, La Vecchia C. Mouthwash use and oral cancer risk: quantitative meta-analysis of epidemiologic studies. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2011;112(6):e130.

しかし、リステリンの安全性の根拠となる論文があまり信用できなさそうです。具体的に見ていきます。

ドライマウス(口腔乾燥)の起因とならない?

リステリンを長期使用することで、ドライマウス(口腔乾燥)を引き起こす可能性が指摘されています。

リステリンの公式HPでは、以下の3つの論文を根拠としてリステリンがドライマウスの起因とならないとしていました。

2. Fischman SL, Aguirre A, Charles CH. Use of essential oil-containing mouthrinses by xerostomic individuals: determination of potential for oral mucosal irritation. Am J Dent. 2004;17(1):23-26.
3. Kerr AR, Katz RW, Ship JA. A comparison of the effects of 2 commercially available nonprescription mouthrinses on salivary flow rates and xerostomia. Quintessence Int. 2007;38(8):e440-447.
4. Kerr AR, Corby PM, Kalliontzi K, McGuire JA, Charles CA. Comparison of two mouthrinses in relation to salivary flow and perceived dryness. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol. 2015;119(1):59-64.
残念ながら2と3の論文は信用に足りません
まず2の論文ですが、被験者19人14日間しか使用していません。しかもそのうち2人は口腔内の異常を訴えています。14日間なら口腔乾燥を引き起こさないとしても、それ以上長い期間だとどうでしょうか?また、異常を訴えた人の割合は10%と非常に高いと思われます。
次に3の論文です。被験者は20人です。7日間の使用です。2の論文と同様、被験者数が少なすぎるし期間が短すぎます。
続いて4の論文です。こちらは被験者120人(うち60人がリステリンを使用)。12週間の使用ですので、2と3の論文に比べると信用できそうです。12週間程度の使用ならばドライマウスの原因とはならないようです。
ですが、12週間の調査が長期間使用といえるとは思えないですし、被験者数も多くはありません。ドライマウスの原因になるとも、ならないとも言えないと思われます。

口腔内細菌叢の正常なバランスを崩さない?耐性菌が発生しない?

細菌を殺す薬、すなわち抗菌薬を長期使用すると細菌のバランスが崩れることや耐性菌が出現する可能性があることが知られています。

そのため、不必要に長く抗菌薬を飲み続けることは体にとって有害です。

さて、リステリンではどうでしょうか?

リステリンには強い抗菌効果があります。

これは、むし歯や歯周病の原因菌を殺菌する効果があることに関して言えばメリットといえるでしょう。

しかし、口の中にはそのほかにも多くの細菌がいます。

リステリンが悪玉菌だけを殺すのであれば良いかもしれませんが、善玉菌まで殺します。

歯周病が悪化している場合や進行している場合には有効かもしれませんが、歯周病が進行していない健常者がリステリンを使用することには疑問があります。

さて、リステリンの公式HPでは、以下の2つの論文を根拠としてリステリンによって細菌のバランスを崩さず、耐性菌も発生しないとしていました。しかし、全く意味不明です。

3. Kerr AR, Katz RW, Ship JA. A comparison of the effects of 2 commercially available nonprescription mouthrinses on salivary flow rates and xerostomia. Quintessence Int. 2007;38(8):e440-447.
4. Kerr AR, Corby PM, Kalliontzi K, McGuire JA, Charles CA. Comparison of two mouthrinses in relation to salivary flow and perceived dryness. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol. 2015;119(1):59-64.

この2つの論文はドライマウスに関する研究です。細菌叢を壊さないとか、耐性菌が出現しないとは書かれていないんですよね。公式HPが出典を間違えているんじゃないかと思います。

歯牙の着色や歯石の沈着の有意な原因にならない?

わたし個人の意見では、リステリンの使用によって着色や歯石の沈着の原因になるとは考えていません。

リステリン公式HPは以下の論文を根拠にして、歯牙の着色や歯石の沈着の有意な原因にならないとしています。ですが、引用する論文が間違っていると思います。

5. Food and Drug Administration. Oral health care drug products for over-the-counter human use; antigingivitis/antiplaque drug products; establishment of a monograph; proposed rules. Part III. Federal Register. 2003;68(103):32232-32287.
6. Cole P, Rodu B, Mathisen A. Alcohol-containing mouthwash and oropharyngeal cancer: a review of the epidemiology. J Am Dent Assoc. 2003;134(8):1079-1087.
7. La Vecchia C. Mouthwash and oral cancer risk: an update. Oral Oncol. 2009;45(3):198-200.
8. Boyle P, Gandini S, Boffetta P, Negri E, La Vecchia C. Mouthwash use and oral cancer risk: quantitative meta-analysis of epidemiologic studies. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2011;112(6):e130.
これらは全て口腔癌に関する論文です。着色や歯石についての言及はありません。

アルコール含有の洗口液は、口腔癌との因果関係がない?

2000年代前半に、リステリンを長期(30年以上)使用した個人で喉咽頭がん、口腔がんの発現率が上昇しているという結果が報告されました。

このことは未だ明確に立証されてはいません。

リステリンの公式HPでは、長期使用にともない口腔癌リスクがあがることを否定しています。

5. Food and Drug Administration. Oral health care drug products for over-the-counter human use; antigingivitis/antiplaque drug products; establishment of a monograph; proposed rules. Part III. Federal Register. 2003;68(103):32232-32287.
6. Cole P, Rodu B, Mathisen A. Alcohol-containing mouthwash and oropharyngeal cancer: a review of the epidemiology. J Am Dent Assoc. 2003;134(8):1079-1087.
7. La Vecchia C. Mouthwash and oral cancer risk: an update. Oral Oncol. 2009;45(3):198-200.
8. Boyle P, Gandini S, Boffetta P, Negri E, La Vecchia C. Mouthwash use and oral cancer risk: quantitative meta-analysis of epidemiologic studies. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2011;112(6):e130.
以上の論文をまとめると、アルコール洗口液が口腔癌と関連があることはわからなかったということです。

歯科医師であるわたしがリステリンを使わない理由

さて私はリステリンを使っていません。

その理由は、リステリン公式HPにおける長期使用の安全性について信頼がおけないことの他にもあります。

1、私自身の歯周病のリスクが低い

リステリンによる殺菌効果は、歯周病が進行している方には有効です。

ですが、わたしのように歯周病が進行していない場合は、細菌を殺すメリットがあまりないと思われます。

すべての細菌が悪というわけではありません。

2、味覚障害などの異常についても報告がある

リステリンの使用にともない味覚障害が生じたという報告があります。

リステリンの公式HPは、ドライマウスや口腔癌については否定していますが、味覚障害に関しては出現した場合には使用中止を促しています。

3、刺激が強すぎる

リステリンの刺激が強くて好きになれません。

リステリンの使用を勧められるのはこんな人

リステリンの利点は

口の中すみずみにまで薬効成分が行き渡ること
手軽であること
口臭を防ぐこと
殺菌効果があること

上記のように考えます。そこで以下のような方にはお勧めできると考えます

1、歯みがきをすることが難しい方
さまざまな要因で歯みがきが上手にできない方もいらっしゃいます。
リステリンなどのマウスウォッシュは、うがいさえできれば使用条件はクリアーしています。
歯みがきがうまくできない方には補助としてマウスウォッシュは効果的と考えます。
2、歯みがきをする時間がない方
どうしても忙しくて歯みがきができない場合もあるかと思います。
マウスウォッシュのみで歯みがきをしなくて良いとは決してなりませんが、応急的にマウスォッシュで済ませてしまうのも一つの手かもしれません。
3、口臭の予防をしたい方
口臭に関しては効果があるだろうと考えています。
歯みがきをしない理由にはなりませんが、リステリンによって口臭ケアはひとつの手と考えています。
4、歯周病が進んでいて歯茎が腫れやすい方
歯茎が腫れている時や、親知らずが腫れている時にはリステリンによる殺菌効果が期待できるかもしれません。
リステリンで歯周病が治るわけではないですが、歯みがきの補助として効果はあると考えています。
注意:親知らずを抜いた後の腫れには使えません。傷口にリステリンがあたると強烈に痛みがでる他、傷の治りを阻害する可能性があります。

まとめ

・リステリンはマウスウォッシュの中でも殺菌効果が高く歯肉炎に対して有効である

長期的にリステリンを使用することによるデメリットはよくわかっていない(悪玉菌を殺すために善玉菌を殺すのは良いことなのか?)、リステリンの公式HPの反論も納得いくものではない

・リステリンの使用による味覚障害などの異常についても報告があり、口の中が健康な方がリステリンを使用するメリットは少ないと考えている

・リステリンの高い殺菌力と、うがいによって口全体に薬効成分がゆきわたることがメリットになる人もいる

・わたし個人がリステリンを使わないのは、口の中が健康でありリステリンの必要がないから。ノンアルコールでも刺激が強すぎて使う気になれなかったから。

 

 

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