歯磨きではむし歯が予防できない?「ぼくが考えた最強の歯磨き」と「理想の歯磨き」の違いを説明します

豆知識
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こんにちは! 歯科医師のにこです。

歯医者にいったら「もっと歯磨きを頑張りましょう」と言われたことがありませんか?

これまで日本では、むし歯予防のためには徹底した歯磨きが推奨されていました。しかし実は必ずしも全員が厳密な歯磨きが必要とは限らないとも言われるようになっています。Twitterで取り上げましたが「歯磨きに虫歯を予防する効果はない」という記事がありました。

結論からいうと、歯磨きにむし歯予防効果は「あります」

この取り上げられていた記事では、歯磨きでは届かない部分があるから歯磨きだけだとむし歯になるよ、というものでした。裏を返すと歯磨きできてる部分はむし歯予防ができるんです。タイトル詐欺だと思うんですが、いかかでしょう?

そこで今回は歯磨きにできることに限界があることを踏まえた上で、理想の歯磨きについて考えたいと思います。

歯磨きの究極の目的

人はなぜ歯磨きをするのでしょうか?

むし歯になりたくないから?口臭がイヤだから?ホワイトニングするため?

どれも正解ですが歯磨きの究極の目的は「汚れを取り除くこと」です。

この汚れというのは「食べカス」や「着色汚れ」もありますが、もっとも大事なのは「歯垢(プラーク)」です。
歯垢(プラーク)と呼ばれる、細菌が生み出すネバついた汚れを取り除くことが歯磨きの最大の目的です。
歯垢(プラーク)を取り除くことによってむし歯の予防効果や歯周病の予防効果が得られます。
そして、むし歯の予防にはフッ素の働きが重要です。
これを踏まえて「ぼくが考えた最強の歯磨き」をご紹介します。

ぼくが考えた最強の歯磨き

歯科医師のにこが考えた最強の歯磨きをご紹介します!

1、歯の汚れの染め出しをしましょう。

2、歯と歯の間、全てにフロスを通しましょう。

参考引用)サンスターより

全ての部位に対してフロスを適正利用しようとすると、30(歯と歯の間の数)×4(歯面)=120(歯面)を意識しなければなりません。大変ですが頑張りましょう!
3、歯ブラシを使って歯磨きをしましょう。歯磨きした後に染め出した汚れはありませんか?できるかぎり染め出した汚れがない状態にしてください。
4、洗口液でうがいしましょう。
すでに汚れが落ちてるので、洗口液の薬効成分がすみずみまで行き渡りますよ!液体歯磨剤でも洗口液でも構いませんよ。
5、1000ppm以上のフッ素入り歯磨き粉をつかって歯磨きをしましょう。2−3分が良いでしょう。
6、フッ素洗口しましょう
7、その後はうがいはできるだけせず、飲食も30分は控えましょう
以上が「ぼくが考えた最強の歯磨き」です。
こだわりポイントは、フロスと歯ブラシで汚れがなくなった状態で薬効成分が隅々に行き渡るようにしたところと、駄目押しでフッ素入り歯磨き粉とフッ素入り洗口液を使うことでフッ素が口の中に留まっているようにしたところです!
1回たりとも実践したくないですね!

「ぼくが考えた最強の歯磨き」の問題点

ぼくが考えた最強の歯磨きは、最強に面倒くさい歯磨きです。これを実践できる人はまずいないでしょう。

しかし、日本では小さなヘッドの歯ブラシで、細かく丁寧にみがき、場合によってはフロスを使うという非常に面倒な歯磨きが正しいと言われたりします。

確かに完璧を目指す歯磨きはむし歯予防効果も歯周病予防効果も非常に高い効果を発揮するでしょう。

しかし以下のデメリットがあります。

染め出しでの確認が必要である。
歯間ブラシやデンタルフロスを使う必要がある。
上記をすべて行うと1回の歯磨きで10分以上必要となる場合もある。
面倒くさい習慣は定着しづらい。

このように完璧を目指す歯磨きは持続が難しいというのが最大の欠点です。予防法は一生継続しなければ意味がありません

現実的に理想的な歯磨きとは?

歯磨きの目的は「歯垢(プラーク)と呼ばれる汚れを取り除くこと」、そして薬効成分(主にフッ素)を行き渡らせることです。

上記の「僕が考えた最強の歯磨き」は現実的とはいえません。

予防とは習慣がなによりも大切であり、長続きしない歯磨き方法は「理想」からかけ離れています。

さらに、上記の歯磨きを実践したとしてもむし歯になる人はなるという現実があります。

では、理想の歯磨きとはなんでしょうか?

わたしは「最小限の歯磨き時間で、最大限のむし歯と歯周病の予防効果を得る歯磨き」と考えます。

理想の歯磨きをするためには、むし歯予防と歯周病予防をわけて考える

世の中にはむし歯になりやすい人となりにくい人がいて、さらに歯周病になりやすい人となりにくい人がいます。

そのため、その人の体質によって理想の歯磨き方法は変わります。

組み合わせは4通り
1、むし歯にも歯周病にもなりにくい人⇨ラッキー!だけど磨き残しによる口臭や歯の着色などは要注意!
2、むし歯になりやすいけど歯周病にはなりにくい人⇨歯磨きだけだとむし歯の予防には限界があるため食事内容や生活習慣を含めてケアする必要があります。必ずしも徹底的な歯磨きは必要ありません。
3、むし歯にはならないけど歯周病になる人⇨歯医者的には一番要注意!歯磨きしなくても歯が痛くならないパターンの人です。本当はしっかりと歯磨きが必要です。歯がグラグラになって歯医者に来た時には抜歯が必要となる場合もあります。
4、むし歯にも歯周病にもなる人⇨残念ですが人一倍歯磨き方法や食生活、生活習慣に注意する必要があります。
上記のように歯磨きしなくても大丈夫な人には歯磨きの時間はそれほど必要ないですし、むし歯や歯周病になりやすい人にはそれ相応の歯磨きが必要となります。本人の体質によって理想の歯磨き方法は変わることになります。

歯磨きでのむし歯予防

むかしむかし、「むし歯予防」という正義を振りかざし、患者さんに病状を問わずに徹底的に歯磨きをさせる時代がありました。

具体的には、歯を染め出しして磨き残しをチェックしたり、フロスの使用を勧めたりです。実際、今もやっている歯医者は多いです。

そしてすでに習慣として徹底した歯磨きを実施されている方もいらっしゃるかもしれません。

実は歯磨きをすごく頑張ってもむし歯になることがあります。というのも、歯ブラシやフロスをいくら頑張っても磨けないところあるからです。

つまり、歯磨きをすごく頑張ってもむし歯になってしまう方も、自分が歯磨きが下手だと落ち込む必要はないということです。

とはいえ、もちろん歯磨きができている場所にはむし歯の予防効果があるため、歯磨きを頑張らなくて良いとはなりません。

歯磨きでのむし歯予防の改善には限界がありますが、それを承知の上でどこにゴールを設定するか、というのが大事です。

むし歯予防のためにはフッ素入り歯磨き粉を使って2~3分が最も効果あり

唾液中のフッ素濃度が「2分間300ppm以上」だと歯の表面にフッ化カルシウムという化合物が沈着します。これがむし歯予防のカギになります。

テレビを見ながらなどの長時間かけてのんびり磨くと、唾液のフッ素濃度がどんどん薄まっていくし、フッ化カルシウムを洗い流すことにもつながるため虫歯予防効果が半減するとも言われいます。

よって、歯周病の心配があまりない人向けに、フッ素を最大限活用する歯みがきとは以下になります。

1、1450ppmのフッ素入り歯みがき粉をつかう

2、泡や唾液は吐き出さない

3、2〜3分で歯みがきを終える

4、その後のうがいは最小限にする

かなりシンプルだったのではないでしょうか?

あくまで歯周病のリスクが低い方にのみ推奨されますが、理想の歯磨きといっても思ったより負担がないのでは?

歯磨きでの歯周病の予防法

歯周病は深刻な状態に進行するまで自覚症状がほとんどないという特徴があるため、定期的に歯科検診を受ける以外に予防する方法はないと思われます。

徹底した歯磨きは歯周病の予防のために重要ではありますが、残念ながら歯周病は遺伝的な要因も大きく関わってきています。

歯科検診で「現在歯周病になっていない」ことがわかれば「今日までの歯磨きが十分なものであった」ことがわかります。さらに、歯周病は早期発見できれば完全に治癒できる可能性が高いです。
残念ながら歯周病が進行している傾向が見られた場合、歯磨き方法を見直す必要があります。
具体的には歯垢(プラーク)の染め出し、フロスの使用が推奨されることが多いです。
ただ歯磨き習慣を変えるためには大きな労力が必要です。

歯垢(プラーク)の染め出し

歯磨きをした後、染め出しをして、赤く染まった部分が全体の20%未満なら歯磨きはできていると評価されます。この状態を目指すことが第1歩になります。

染め出しのゴールは20%以下をキープすることです。

何より重要なのは前回との比較で、継続して良い状態をキープすることです。

フロスについて

かつては「フロス or 死」とまで言われたフロス。

しかし多くの方にとってフロスを日常的に使用する必要はないかもしれない、というのが最新の見解になっています。

その理由は一般人が適正使用するのは極めて困難であるためとか、しばらくするとフロスは使用しない(たまにしかやらない)ようになるからだとか言われています。

予防のための歯磨きは習慣的に継続することが必要なため、すべての歯にフロスを通すという煩雑なことはあまり効果がないのかもしれません。

あくまで歯磨きがしにくい場所の補助として使うのが合理的のようです。

歯磨きをするタイミング: 寝る前の歯みがきが最重要

1日3回毎食後の歯みがきが奨励されていますが、1日2回と1日3回で予防効果の差は小さいことがわかっています。

歯みがきのタイミングですが就寝前に歯磨きし、歯磨き後はお水あるいは無糖のお茶など以外は口にしないというのが理想です。

この寝る前の歯みがきが、虫歯予防にとっても歯周病予防にとっても最重要です。

食後に歯磨きをしたとして歯磨きには限界がある以上、細菌にとっての栄養源は残っています。

食後の歯磨きがダメというわけではないのですが、食事直後には歯垢(プラーク)は形成されておらず、時間の経過とともに形成されていきます。

つまり食後に歯を磨いても、その後にプラークが形成されてしまい、そのまま寝てしまってはむし歯・歯周病が進行することになります。

(厳密にはプラークの形成には24時間ほどかかるといわれているので、どこかの1日に1回徹底的に磨ききれば大丈夫です。しかし1日1回で磨き切るということは実際には困難でしょう)

寝ている間は唾液の分泌が少なくなり、菌にとっては活動しやすい状況になります。

ですので、寝る前に徹底した歯磨きが最も重要であると考えます。

予防のためには歯科検診へ

現代ではフッ素入りの歯みがき習慣はほとんどの人が身に着けています。しかしそれだけではむし歯や歯周病は完全には予防できません。

自分でできる完全な予防は存在しないため早期発見= 歯医者さんの定期健診が必要になります。

そして半年ごとに検診を重ねていけば治療が必要となるレベルの問題は必ず発見されます。

これだけ様々な研究が日々、世界中でされているので、予防法はより洗練され、効果的な方法が見つかると期待されます。

それは新しい予防法を発見していくだけでなくより手順が少なく、より効果的な方法へ絞り込んでいくというのも、これからの公衆衛生に求められているのではないでしょうか。

それが毎日実施する習慣として身に着けられるか、に大きくかかわってくるからです。

まとめ

・歯周病のリスクが低い方は2−3分のフッ素入り歯磨き粉をつかった歯磨きで十分。

・フッ素入り歯磨きの後はうがいは最小限にする。

・歯周病のリスクが高い人には、染め出しやフロスの使用が推奨される。

・最高の予防方法は定期的な歯科検診。

理想の歯磨きには、時間・金額・労力・効果・継続性の全ての要素が必要です。

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