【フッ素の危険性】フッ素塗布の有効性とフッ素入り歯磨き粉をチューブまるまる1本飲み込むと危険かもってお話

豆知識
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こんにちは。歯科医師のにこです。

当ブログではよく「むし歯予防に有効であることが科学的に信頼できるのはフッ素のみである」ということを記載しています。

フッ素について正しい知識と理解をすることで、フッ素の効果を最大限に活かしむし歯を予防しましょう。

この記事では以下の事について解説します

  • フッ素とは?
  • フッ素塗布とは?
  • フッ素塗布の効果
  • 安全性は?
  • フッ素塗布の方法
  • フッ素入り歯磨き粉の効果
  • 歯磨き粉を食べると危険?
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そもそもフッ素とは何か?

フッ素とは元素名(元素記号F)を表します。元素については中学生で学びますよね。元素の周期表の覚え方で「すいへーりーべーぼくのふね」の「ふ」がフッ素です。

フッ素は人体の0.007%を構成すると言われています。ほとんどの食べ物には微量ではありますがフッ素が含まれていて、これらを取り入れているのですね。食べ物から摂取できるフッ素量はごくわずかのため、むし歯を予防するにはほとんど意味がありません。

そこで、フッ素入りの歯磨き粉を利用したり、歯科医院でフッ素を塗布してもらうことが必要です。

注意:フッ素は”フッ素のみ”で存在することがほとんどありません。歯磨き粉に含まれる「フッ素」も正確には「フッ化物」となります。当ブログではわかりやすくするため「フッ化物」を単に「フッ素」と記載していることがあります。

フッ素塗布とは?

フッ素塗布とは、虫歯予防のため歯にフッ素を塗布することです。

1歳半〜2歳頃から受けることができます。

特に乳歯・永久歯が生えたての時期はフッ素を吸収しやすく、強い歯を作りやすいと言われています。

効果を持続させるために3ヶ月に1回くらいのペースで定期的な塗布が有効です。

フッ素塗布の3つの効果

フッ素塗布で得られる3つの効果をご紹介します。

再石灰化の促進

歯は食事をするたびに表面が溶かされています。しかし同時に唾液の力で溶けた表面を修復しています。

これが再石灰化です。

このバランスが崩れてしまうと歯が溶けてしまいます。

フッ素は再石灰化を促進する力があります。この効果によって虫歯の予防が見込めます。

歯質の強化

フッ素には歯質を強化する効果もあります。

生まれたての乳歯は柔らかく溶けやすい状態のため、虫歯になりやすく進行も通常より早くなっています。

ここでフッ素を塗布すると歯質が強化され、溶けにくい歯になると言われています。

酸の抑制

虫歯は、むし歯菌が作り出した歯垢(プラーク)の中で、むし歯がつくる酸により歯が溶けてできます。

フッ素は、歯を溶かす原因の酸の働きを抑制する効果があります。

フッ素塗布の4つの方法

フッ素塗布は主に以下の4つの方法をご紹介します。

綿棒法

綿棒などにフッ素をつけて、歯に直接塗る方法です。

ピンポイントで塗布することが可能で、3〜5分で終わります。

小さいお子さんでもストレスが少なく受けることができます。

歯ブラシ法

まず1度歯磨き粉をつけないまま歯を磨きます。

歯ブラシの後、口をゆすぎすぎないようにしましょう。

その後もう1度ジェルタイプのフッ素を歯ブラシにつけ、通常の歯磨きの要領で塗っていきます。

フッ素洗口

フッ素洗口は、フッ化ナトリウム入りの洗口液で1分間ほどうがいをする方法で、吐き出すことが必要です。

週1回だけおこなうものと週5回取り入れるものがあり、その違いはフッ素濃度です。

使用方法を守るようにしましょう。

継続しやすい反面、フッ素濃度が高めのため液を飲み込みすぎるとフッ素の副作用があるとも言われています。

トレー法

トレー法は、既存のものまたは個人に合わせたトレーに、ジェルまたは液体タイプのフッ素を入れ、そのトレーを口に入れることでフッ素を塗布する方法です。

直接長い時間フッ素に触れられますが、トレーを作るには技工士の型取りが必要です。

そのため期間がかかり費用も高くなるというデメリットがあります。

フッ素塗布は安全?

結論から言うとフッ素塗布は安全です。

フッ素は、単体だとガラスやプラスチックを溶かせるほどの酸化作用があり、人間にとっては猛毒となります。

そのため、フッ素塗布は危険、子どもに受けさせない方が良いというイメージや意見もあるかもしれません。

ですが、歯科医院で使っているのは安全性の高いフッ化ナトリウムで、単体のフッ素とはまったく異なります。

単体で身体に摂取されることはなく、危険性はないのです。

また、歯科医院でのフッ素使用量でフッ素中毒 (嘔吐・腹痛を伴う) になることもないので、安心して受けることができます。

フッ化物配合歯磨き粉のむし歯予防効果


・フッ化物配合歯磨剤は、小児う蝕だけではなく、成人の根面う蝕にも有効
・フッ化物イオン濃度が1,000ppmを超える歯磨剤の場合は、500ppm上昇するごとに臨床効果が6%上がる


・フッ化物イオン濃度の上限1,500ppmは世界標準である
・世界150以上の保健専門機関がフッ化物応用を推奨している
・成人用歯ブラシの全幅に1,500ppmのフッ化物配合歯磨剤を1g付けて、それを全部(フッ化物量1.5㎎)飲み込んだとしても中毒量(体重20㎏で100㎎)には達しない

フッ素入り歯磨き粉の効果的な使用方法

1、フッ素入り歯磨き粉は、歯ブラシの半分くらい(成人で0.5 g以上)使う

2、歯磨き後のうがいは、少量(約15mLの水)で短時間(約5秒くらい)で1回だけにする

3、歯磨き後の飲食はできるだけ控える(2時間程度)

フッ素反対派も存在する

フッ素は一度に過剰摂取すると中毒症状(吐き気や腹痛など)があらわれます。

また乳児期から小児期にかけて高濃度のフッ素を継続的に摂取すると「歯のフッ素症」という特徴的な症状がでることがわかっています。具体的には、エナメル質形成障害によって歯の色や形に異常が認められる状態です。

これらのことから「フッ素は毒であり、フッ素塗布することは悪である」とする派閥が存在します。

ですが上記のことは世界中で知られており、水道水への適切なフッ素濃度や、こどもの歯磨き粉へのフッ素濃度については様々な研究がなされており、普段使用する量における安全性は確立されています。

というのが世界で多数の歯科医師の意見と思われます。まれに歯科医師でもフッ素反対派が存在します。

フッ素中毒量について計算してみた

日本歯科医学会 、日本口腔衛生学会他では 2mg/kg を中毒量としています。

(財)日本中毒症情報センターでは、中毒量は5~10mg/kg、消化器症状は約3~5mg/kgで生ずるとしています。

日本歯科医学会はより厳しく中毒量を定めています。

今回は厳しめの2mg/kg を中毒量として考えていきます。

1歳半の赤ちゃんの場合

1歳半の赤ちゃんの体重は10kgと言われてますので、20mgのフッ素を一度に摂取すると中毒症状の可能性がありそうです。

子ども用の歯磨き粉の場合

こども用フッ化物配合歯磨き粉のフッ化物濃度は500ppm程度です。歯磨き粉1gに0.5mgのフッ化物が含まれています。
例えば5歳未満の子どもにオススメの歯磨き粉「チェックアップのバナナ味」がそうですね。
1歳半の赤ちゃんが、この歯磨き粉を40g一気飲みすると中毒症状が起こり得ます。
この歯磨き粉チューブは60gです。つまりフッ素500ppm歯磨き粉の2/3の量を一気飲みすると中毒症状が出る可能性があります。
ちなみに日本中毒症学会の基準では、チューブ一本を丸呑みしても中毒量には達しません。

大人用の歯磨き粉の場合

1歳半の赤ちゃんが成人用のフッ素配合歯磨き粉を食べた場合を考えてみましょう。
成人用のフッ化物配合歯磨剤のフッ化物濃度は950〜1450ppm程度です。歯磨剤1gに0.95〜1.45mgのフッ化物が含まれています。
1歳半の赤ちゃんがフッ素1450ppmの歯磨き粉を13.7g飲み込むと中毒症状が出てしまいます。
こども用の歯磨き粉に比べると危険度が増していますね。
大人用の歯磨き粉を食べちゃうことはほとんどないでしょうが、手の届かない場所に置くようにしておきましょう。

6歳の子どもの場合

6歳児の平均体重は20kgと言われています。40mgのフッ素で中毒を起こします。

6歳以降のお子さんへの使用を推奨しているライオンのこども用チェックアップジェル グレープ味で考えてみます。

こちらの歯磨き粉はフッ素950ppmとなっています。この歯磨き粉は1gにつき0.95mgのフッ素が入っていますので、この歯磨き粉を42g飲み込んでしまうと中毒を起こす可能性があります。
こちらの歯磨き粉は1本60gですので、2/3の量を一気飲みすると中毒症状が出る可能性があります。
日本中毒症学会の基準では、チューブ一本を丸呑みしても中毒量には達しません。

成人(60kgと仮定)の場合

成人用のフッ化物配合歯磨剤のフッ化物濃度は950〜1450ppm程度です。歯磨剤1gに0.95〜1.45mgのフッ化物が含まれています。
60kgの成人が120mgのフッ素を取り込むと中毒が起こります。つまりフッ素1450ppmの歯磨き粉を82g摂取すると中毒となります。
だいたい歯磨き粉1本分を飲み込めば中毒を起こしてしまいそうです。
日本中毒症学会の基準では、チューブ一本を丸呑みしても中毒量には達しません。

計算してわかったこと

今回はフッ素中毒症について日本歯科医学会が設定した厳しい基準である2mg/kgで計算しました。

日本中毒症センターやオーストリアのウイーン毒物コントロールセンターは5mg/kgを提唱していますので、今回の計算よりもっと安全性は高いと考えています。

厳しい基準であっても、たとえ1歳の赤ちゃんでさえ、成人用のフッ素入り歯磨き粉を10g以上を一度に摂取しない限り急性中毒は起こらないことがわかりました。

歯磨き粉の1回あたりの使用量は、大人でも1g程とされていますが、仮に全てを飲み込んだとしても日常で使用する分には問題ないと言えるでしょう。

とはいえ、もしも赤ちゃんや子どもが歯磨き粉の味を気に入ってしまって、歯磨き粉をがぶがぶと食べてしまったら中毒を起こす可能性があります。

体重が小さい時期ほど中毒症状はでやすいので、子どもへのフッ素使用は基本的に安全ではあるが注意も必要と結論づけたいと思います。

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