【ヘブライ語で読む旧約聖書】創世記1章1節

旧約聖書
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創世記1章1節

בְּרֵאשִׁ֖ית בָּרָ֣א אֱלֹהִ֑ים אֵ֥ת הַשָּׁמַ֖יִם וְאֵ֥ת הָאָֽרֶץ

(ベレーシート バーラー エロヒーム エット ハッシャマイーム ヴェエット ハアーレツ)

実際の発音は、下記動画の0:35〜0:58(ゆっくり)、2:24〜2:29(ふつう)。

ヘブライ語、日本語口語訳、英語(KJV)

בְּרֵאשִׁ֖ית בָּרָ֣א אֱלֹהִ֑ים אֵ֥ת הַשָּׁמַ֖יִם וְאֵ֥ת הָאָֽרֶץ׃

口語訳:はじめに神は天と地とを創造された。

英語(KJV):In the beginning God created the heaven and the earth.

1、בְּרֵאשִׁ֖ית(ベレーシート:はじめに、In the beggining)

ב:ראשית  ベレーシート 前置詞+名詞(普通)・女性・単数

ヘブライ語は右から読むので、一番右の「בראשית」の部分を最初に発音します。

בראשיתはベレーシートと読み、最初の「ベ」は英語ではinに当たる前置詞です。レーシートの部分が名詞です。

2、בָּרָ֣א(バーラー:創造した、created)

ברא バラー 動詞・クァル(基本)・完了・三人称・男性・単数

この動詞の主語は三人称の単数の男性名詞をとるはずだが、そうなっていない。主語となる「אלהים」が特別だから。

3、אֱלֹהִ֑ים(エロヒーム:神、God)

אלהים エロヒーム 名詞(普通)・男性・複数

エロヒームは複数形の名詞で、神という意味の単語。

前述の通りバーラーは単数の動詞にも関わらず、主語は複数形となっています。

この相違は、主語に対する敬意を表わしているようです。

他の言語でも、敬意を表すために相手が一人でも複数形の代名詞を用いることがあります。例えば英語で「あなた」を表す「you」。

もともと「you」は二人称複数でしたが、現在は単数でも使用されています。

これは、敬意を払う場合には相手が一人であっても複数形のyouを使っていたが、やがて敬意を払わない相手にもyouを使うようになってしまったという歴史のせいです。

とにかく、ユダヤ教の神は複数形の形を取りますが、実際には単数です。神が”我々”とまるで複数のように語ったところで、実態は単数。言語上の形は複数。

続いて、構文です。これまでの3つの単語で副詞、動詞、主語が揃いました。

ベレシート(副詞句) バーラー(動詞) エロヒーム(主語)

4、אֵ֥ת(エット:訳なし)

エット(את)は前置詞だが、説明がとても難しい。「目的語が定冠詞によって導かれるような対象に付けられる」

אתについて⇨【独学でヘブライ語を学ぶ】前置詞 את

定冠詞と不定冠詞については、英語でいうthe が定冠詞、a(an)が不定冠詞。

本文では次の単語「הַשָּׁמַ֖יִם」の頭文字「הַ」が定冠詞である。הַ・שָּׁמַ֖יִם⇨הַשָּׁמַ֖יִם という具合だ。

英語の場合は定冠詞と名詞の間にスペースが入るが、ヘブライ語では定冠詞と名詞はくっついてしまうようだ。

5、הַשָּׁמַ֖יִם(ハッシャーマイム:天、the heaven)

ה:שמים ハ・シャマイム  定冠詞+名詞(普通)・男性・複数

ヘブライ語では定冠詞と名詞がくっつく。

ハッシャーマイムは、ハとシャーマイムに分けられる。ה(ハ)が定冠詞。שמים(シャーマイム)は空とか天とかいう意味の単語。

6、וְאֵ֥ת(ヴェエット:〜と、and)

ו:את ヴェ・エト  接続詞+前置詞

וְאֵ֥תは分解すると、וְ(ヴェ)とאֵ֥ת(エット)に分けられる。

ו(ヴェ)は接続詞で、英語でいうand。

את(エット)は、次の単語が定冠詞で導かれるような単語のまえに置かれる。

7、הָאָֽרֶץ(ハーアーレツ:地、the earth)

 ハ・アーレツ  定冠詞+名詞(普通)・女性・単数 ה:ארץ

定冠詞 הָ(ハー)とאָֽרֶץ(アーレツ)から成る。冠詞があるとアーレツと発音するが、冠詞が無い場合はエレツと発音する。

ハ・アーレツには「地」という意味もあるが、かつて世界に流浪していたユダヤ人の間で故国イスラエルのことを指す言葉としても使われていた。イスラエルの新聞のひとつの名称は「ハーアーレツ」を採用している。

1章の1節だけでも深い

対象的なものを取り上げている

創世記1章1節より「はじめに神が天と地を創造された」からはじまっている。

ヘブライ語において、主なる神エロヒームは複数形だが、動詞バーラーは単数を要求している。これはエロヒームが言語上でも神聖であることを示している。

その神は、複数形であるシャーマイム(天)と、単数のエレツ(地)を創造した。天は男性名詞で、地は女性名詞である。

シャーマイム(天、the heaven)は、神エロヒームと同様に神聖である複数形。

・天と地
・複数形と単数形
・神聖なものと卑属なもの
・男性と女性

このように翻訳されたものでは知り得ない、ヘブライ語原典ならではの面白い構造を知ることができる。

ベレーシート:ヘブライ語は定冠詞の有無を発音で区別することがあるが?

ב・ראשית(ベ・レーシート)

ベレーシートは英訳するとIn the beginning

英訳時に定冠詞 the を用いている。たしかに英語で考えた場合「the」がつくと特別な感じがでて良さそうに思える。まさにはじまりの時っていう雰囲気を感じる。In a beginningではしっくりこない気もする。

しかしヘブライ語の発音から考えると、定冠詞がある場合の発音はバレーシートとなる。なんとヘブライ語では特定の前置詞に名詞が続く時、その名詞につくはずだった定冠詞が消えることがある。そのため実際の発音によって定冠詞があるのか無いのかを区別する必要がある。

בראשיתは、バレーシートではなくベレーシートと発音されるため定冠詞はないと考える必要がある。

日本人の感覚では冠詞なんてどうでも良いと感じるが、英語のように冠詞の概念がある言語を学ぶ人たちでは、冠詞の有無で意味が大きく違ってしまうことを理解していると思う。

ここでもヘブライ語から多言語に翻訳される違いがでている。

まとめ

旧約聖書1章1節のたった7語だけでとんでもない情報量がつまっている。

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