注意!むし歯を広める活動を推奨している医者・歯医者がいます
「マヌカハニーなどの純粋なハチミツはむし歯の原因にならない」と言っているのです
①はちみつで歯を磨くこと
②はちみつを大さじ1杯、コップの水に溶かしてうがいをする
これで歯周病や虫歯を予防し、口臭を防ぐ事が出来ると薦めているのです
もちろん歯科医でない方が、ハチミツの効果のもつ素晴らしい効果について信じたい気持ちはよく理解できます
恥ずかしながら私自身も「もしかするとハチミツにむし歯の予防効果があるのかもしれない」と期待をしたために今回初めてハチミツに関する様々な論文を読んでいきました
その中でハチミツのもつ素晴らしい効果についても知ることができました
ですが
「マヌカハニーがむし歯にならず、むしろ予防につながる」という意見を肯定することは絶対にできませんでした
例えばマヌカの研究の第一人者であるピーター・モランPeter Molanは2001年に発表した論文中で、マヌカハニーを「歯周病、口腔癌その他の口内疾患」の治療に用いる可能性について言及しています
“The Potential of Honey to Promote Oral Wellness”. Molan, P. C. General Dentistry (2001).
このモラン博士は、UMF(Unique Manuka Factor)、MGO(メチルグリオキサール)を発見しています
マヌカハニーにはUMF、MGOがあることを根拠としてむし歯菌を抑制すると説明しているブログが見かけられました
しかしモランはこの論文中で、マヌカハニーに虫歯を予防する効果があるかもしれないという意見をしたにすぎずモラン自身はこの件についてエビデンスのある結論を示していません
他にも日本を含む世界中でハチミツを医療に用いるための様々な実験・研究がされています
今回はマヌカハニーがむし歯・歯周病を予防するのかどうかについて徹底解説します
本当にマヌカハニーはむし歯にならないのか?
マヌカハニーがむし歯の原因にならず、むしろ予防にもなるという説があります
その根拠として言われるのが
1、ハチミツの糖分はむし歯になりにくい(ならない)
2、ハチミツがもつ抗菌成分でむし歯菌を殺す
確かにその効果は一部ありますが正しいとは言えません
以下に解説します
ハチミツの糖分
ハチミツがむし歯にならない理由の間違った説明①
確かに、むし歯の原因となる糖分とは砂糖(ショ糖)を指すことが多く、ハチミツの糖分であるフルクトースやグルコースはそれに当たりません
むし歯菌はショ糖からのみ不溶性グルカン(プラーク、歯垢という細菌の塊)を形成するから、というのがハチミツが虫歯にならないとする根拠としてあげられています
ですが反論があります
むし歯の原因となるのは不溶性グルカンのせいだけではありません
虫歯菌を含むさまざまな口の中の細菌が酸を産生すると歯の表面を溶かしてしまういむし歯になります
この場合は砂糖以外の糖、すなわちフルクトースやグルコースもあてはまります
繰り返します
ハチミツはむし歯の原因になりえます
例えばロチェスター大学医学センターの研究では、コーラ、ハチミツは砂糖とほぼ同程度で虫歯の原因となることが示唆されています
基本的に人間以外の動物にはむし歯はなく、犬や猫はむし歯にならないということもわかっています(ただし歯周病にはなる)
猫は虫歯にならないという事実に隠れた大きな罠【歯石・歯周病】
しかし果物を主食にするコウモリや、果物をよく食べていた像などからはむし歯が検出されています
さらに雑食であるクマはむし歯をもつ動物として有名です
実在した「クマのプーさん」の虫歯は蜂蜜のもらいすぎが原因だった?
歯科医院のブログによっては「ハチミツは虫歯にならない」と言い切っているところがありました
「なりにくい」ではなく「ならない」です
どうして言い切れたのでしょうか?
続いてハチミツの持つ抗菌作用についても検証してみましょう
ハチミツが持つ抗菌作用
ハチミツがむし歯にならない理由の間違った説明②
確かにハチミツには様々な菌に対する抗菌作用があることが報告されています
ですがむし歯菌がハチミツに対して耐性を持っていることを示唆するデータや、口腔内のpHを下げることで結果として歯を溶かすことを示唆するデータがあります
2017年の論文で、マヌカハニーの本場ニュージーランドのオタゴ大学の研究ではマヌカハニーが歯周病原細菌や虫歯原因細菌にどのような効果を及ぼすかを調査しています
この論文ではハチミツ濃度を上げると、歯周病の原因菌として有名なP.gingivalisの菌数が減ることが示唆されています
しかし虫歯の原因菌として有名なミュータンス菌に関しては、低濃度では耐性を示しており、高濃度の場合でのみ増殖抑制効果が認められました
しかし高濃度のはちみつは同時に口腔内のpHを下げることも報告されています
この研究の結論はこうです
1、マヌカハニーは歯周病原細菌の抑制につながる可能性が示唆された
2、むし歯菌であるミュータンス菌はマヌカハニーに対する耐性を持っているが、高濃度ではむし歯菌の増植能を抑制につながる可能性が示唆された
3、高濃度のマヌカハニーは口腔内のpHを下げてしまい歯を脱灰する危険性があることが示唆された
マヌカハニーがむし歯になるかどうかの結論
私の意見をはっきりさせる意味で「むし歯の原因になる」と結論づけます
とは言え、たしかにマヌカハニーはむし歯になりにくい食品とは言えそうです
そこでハチミツは普段の食事やおやつにだけ使うようにしませんか?
「はちみつを塗って寝る」といった健康法、むし歯のリスクを高める可能性があるためやめるべきと考えます
マヌカハニーは歯周病予防には有効のよう
2008年の日本の論文で、ハチミツを含む製品による歯石の形成阻害について調査したものです
これによると歯磨き粉などにハチミツ成分を入れることにより、歯石抑制効果が期待できることが示唆されたようです
2017年のニュージーランドの論文(先ほども引用したものと同じです)、ハチミツによって歯周病源菌の増植能を抑制するという結果がでています
これらを考えると、ハチミツは歯周病の予防に関しては有効と言えるのかもしれません
ただし、すでにできてしまった歯石を落とす効果はありません
ハチミツの効果を勧めている口コミで「ハチミツ塗ったら歯石が落ちて歯医者が必要なくなった」というコメントがありましたが、完全なる嘘(あるいは勘違い)です
ハチミツに歯石を融解したり除去する効果があるなどありませんのでご注意ください
まとめと考察(+言いたいこと)
まとめと考察
・ハチミツはむし歯の原因になる
ハチミツの糖分に関して言えば、純度の高いハチミツにはショ糖が含まれず、フルクトースとブドウ糖から成るためむし歯になりにくい。しかし、フルクトースとブドウ糖によっても酸は産生されるため結果として口腔内のpHは下がってしまう。このことはむし歯のリスクがあると言える。
またむし歯菌に対する抗菌作用として、高濃度のハチミツであれば菌増植能を抑制することが示唆された。しかし、うがいとして薄めて使った場合の濃度では菌の増植を抑制されない可能性がある。
以上のことから、普段の食事やおやつとしてハチミツを使用するのは良いと思われる。しかし、夜寝る前に歯に塗布したりうがいに使うのはためらわれる
・歯周病に関しては予防となる可能性が示唆されている
歯周病菌の増植を抑制すること、歯石の沈着の防止に関しては効果がありそうである。
やや話がそれてしまうが、犬や猫の歯みがき粉にハチミツが入ったものがある。犬・猫にはむし歯菌がおらず(とは言え、犬には甘いものを与えた結果むし歯菌が検出された報告がある)、歯周病の進行が心配されるため、ハチミツを使った歯磨き粉というのは上記のハチミツの性質を考えるといいのかもしれない。ただし、本来犬や猫は肉食動物であり、糖分を摂取しない生き物であるため代謝の面を考慮していないようにも感じる。
言いたいこと
以下、強めに主張しておりますのでご注意ください
ハチミツには健康面で様々なメリットがありそうです
ですが、むし歯の原因とはなりえると考えます
一般の方で、ハチミツが虫歯になる可能性を理解した上で寝る前にハチミツを飲んだり、うがいをされる方はそれで良いと思います
科学的に正しいと思われることが、必ずしも生活の質を向上させるわけではないからですね
ただ「医師・歯科医師」は話が別です
医療従事者ならば、科学に基づき健康増進に努めなければなりません
十分な検証もせず、健康に被害が及ぶ可能性があることを勧めるのは全くもっておかしいことです
「ハチミツがむし歯にならない」は一般の方で違和感を覚えると思います
自分の患者が「先生が言うようにハチミツ塗ってたけどむし歯になった」となったらどう説明するんでしょうか?
「ハチミツ以外が原因でむし歯になった」とでも言うのでしょうか?
ハチミツ健康法を提唱された医者の方は、自身のお子さんにハチミツを塗ってもむし歯にならなかったといってます
ですがサンプル数が少なすぎます
それにむし歯のリスクというのは糖の種類や菌だけでなく、歯や唾液の質、そして時間が組み合わさって考慮すべきです
少なくともすでにむし歯がある方にとってはハチミツを塗ったりうがいに使うのはリスクでしかありません
ましてやハチミツがむし歯を治すなんてことはあり得ません
ここまでお読みいただきありがとうございます
健康に被害が及ぶ可能性のある方法と判断し、今回は強めに表現させていただきました
私自身、ハチミツは大好きですが使い方は間違えないようにしましょう
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