メイドインアビス13話アニメオリジナルのシーンについて
アニメ1期は原作コミックの1〜4巻に相当する内容を扱っていて、最終話ではリコさん隊にナナチが加わり深界五層へ向かうところまでが描かれています。最終話のラストにアニメオリジナルとなるシーンが挿入されています。
完全アニメオリジナルである伝報船シーン
伝報船シーンは、メイドインアビス最終話である13話「挑む者たち」の42分30秒頃から観ることができます。見ての通りリコ、レグ、ナナチがオースの街へ伝報船を飛ばしています。
原作では伝報船をとばすシーンは描いていないのではなく、とばしていませんでした。というわけでこのシーンは完全にアニメオリジナルとなります。
アニメオリジナルというものは原作の雰囲気を破壊してしまう可能性も秘めています。そもそも深界四層から電報船をとばしてもオースの街まで届く確率は非常に低いです。原作者のつくしあきひと先生も当初は伝報船をとばすシーンについて渋っていたようです。
アニオリ伝報船シーンに対する原作者つくしあきひと先生のコメント
つくし あのシーンはアニメのオリジナルですが、シナリオの段階で提案されて、僕は渋っていたんです。でも、代案を考えてみてもいまいち締まらないし、物語を締めるためにはこれがいいと言われたので承諾しました。ただ、最初は電報船がすんなり一層まで上がってしまっていたんです。でも本来四層から一層に電報船が届くことはほぼないので、偶然が偶然を呼んで届いたようにしてくださいとお願いして。実際に出来上がったフィルムを観たら、電報船がボロボロになっているし、電報船の上がっていくさまがリコたちの旅を回想している形になっていて、感動してボロボロ泣きました。音楽も物凄く良かったですよ。
引用:アビス探窟録・下巻より
つくしあきひと先生の作品に対する思いが本当によく伝わります。そしてその思いに応えてる制作サイドも凄い。
ちなみに言及されている音楽は『Hanezeve Caradhina (ft.Takeshi Saito)』。めちゃめちゃ良いです。
伝報船のシーンを静止画で振り返る
各層での伝報船の様子をご覧ください。リコたちのこれまでの旅を振り返るような作りで本当に素晴らしいです。
ぜひアニメあるいは劇場版総集編でご鑑賞ください。
深界四層:出発
レグとナナチが見守る中、リコが伝報船を飛ばします。
順調に深界四層から飛び立っていく伝報船。
深界三層:マドカジャクの襲撃
無事に深界三層まで上っていきます。
しかし深界三層の原生生物 マドカジャクに標的にされてしまいます。
初撃をはずしてしまうマドカジャク。
マドカジャクが振り返るとネリタンタンたちがいました。
ネリタンタンの巣へ突っ込むマドカジャク。
伝報船はさらに上昇をつづける。
深界二層:マルルクが伝報船を発見。修復して再出発。
さかさ森で突風に飛ばされてしまう伝報船。
伝報船はひっかかってしまい上昇できなくなってしまうが、マルルクによって発見される。
破けてしまったであろう伝報船。マルルクによって修復してもらう。
『地伏せり』のメンバーも見守る。
伝報船の再出発。
オーゼンも見守っていました。
続いてナキカバネのコロニーへ。ナキカバネの瞳の中で伝報船が上昇する姿が描かれます。
深界一層
風乗りの風車を通過
オニタチキリの群れが襲来
ぼろぼろになりながらも上昇を続け・・・
着地:リコとレグの出会いの場にて
リコたちの封書をナットが回収。
ナットともう一人は顔がうつらない。シギーではない?
回収後:オースの街へ
リコたちの封書は無事にオースへ到着することができた
オースの街に敷き詰められるように散っているトコシエコウの花びら
建物
水路
至る所にトコシエコウが散っている
風に舞うトコシエコウの花びら
夕暮れ時のオース全体像
リコたちが伝報船に書いた内容を知ることができる
原作コミックの特典付属の『しおり』にその内容が奈落文字で書かれていました。
つくしあきひと先生のtweetです。残念ながらリンク切れですが・・・。
そういえば奈落文字の書いてある特製しおりってあったじゃないですか。https://t.co/r0YFX1JYXQ
今回リコたちが飛ばした内容、これなんですよ。— つくしあきひと (@tukushiA) September 29, 2017
わたしも実物のしおりを持っていないのですが『メイドインアビス しおり』と検索するとヤフオクやメルカリなどで見ることができます。
奈落文字で書かれている特製しおりを解読すると・・・
1巻 「りこさんです いましんかい よんそうです」
2巻 「けがとかしたけど れぐもわたしも げんきです」
3巻 「とてもすごいひとに しゅぎょうつけて もらいました」
4巻 「おないどしなのに あおふえのこもいたよ かわいい」
5巻 「ふわふわのともだちも できました かわいい」
伝報船シーンについて考察
感動的なシーンの連続でしたが、いくつかの謎が残されました。わたしが疑問に思ったのは以下のようなことです。
深界三層:マドカジャクが伝報船への攻撃をはずしたのはなぜ?
深界二層:マルルクたちが直接伝報船を送り届ける、あるいは探窟家へ渡した方が確実では?
深界一層:リコがレグを見つけた場所に伝報船が辿り着いたのはなぜ?ナットと一緒にいる探窟家はだれ?
オースの街:街に人がいないのはなぜ?トコシエコウの花びらが街中にしきつめられている理由は?建物のガラスが割れているのはなぜか?
深界三層での謎
マドカジャクが伝報船への攻撃をはずしたのはなぜ?
考察と称しながら申し訳ないのですが、こればっかりはたまたまだと考えています。
あくまで偶然によってマドカジャクの最初の攻撃は失敗してしまった。しかし伝報船へもう一度攻撃をしかけようとしたところでたまたまネリタンタンたちを見つけてしまうのです。けっきょくマドカジャクはネリタンタンにも逃げられてしまいます。
本来深界四層からの伝報船はオースの街まで届くことはほぼない、とされています。偶然に偶然が重ならなければ届かないのです。
マドカジャクのシーンはあくまで偶然の1つにすぎず、マドカジャク以外の原生生物、あるいはアビスの環境によって伝報船の上昇は阻まれていたのでしょう。その全てを偶然によって回避できた。そう考えるしかないと思っています。
深界二層での謎
マルルクたちの行動の謎
シーカーキャンプのメンバーは伝報船を回収後、わざわざ修復し、そして再出発させています。
しかし何故伝報船を飛ばしたのでしょうか?直接オースの街へ届けたり、あるいはシーカーキャンプに寄った探窟家へ渡したほうが確実ではないでしょうか?
再出発させた方が演出的に美しいですが、これは不自然にも思えました。ライザの封書の場合は黒笛ハボルグが回収しにきました。
しかし、ここもちゃんと理由があると考えます。
まず考えられる理由を4つ挙げ、最後に結論を述べたいと思います
理由その1、赤笛リコの封書だったから
白笛ライザの封書と違って『価値』が低いものです。よってわざわざ送り届けるものではない。
理由その2、シーカーキャンプのメンバーはオースの街へいけない(いかない)
地臥せりのメンバーは地上に帰る場所のないものたちです。マルルクは日の光に弱く地上へ行くことは困難。オーゼンは不動。よって直接送り届けることはしない。
理由その3、手紙を託せる探窟家がいない
二層、シーカーキャンプへ立ち寄る探窟家はそう多くないのかもしれません。
しかしリコたちがシーカーキャンプを離れる際に「次の大規模探索隊がくるまで・・・」というセリフがありました。その探窟家に渡すこともできたのでは?とも思います。
マルルクがほかの探窟家に手紙を渡そうとしなかったのは、リコの手紙がリコの友人に宛てたものだったからではないでしょうか?プライベートの手紙をプロの探窟家にお願いするのは、的外れにも思えます。
理由その4、伝報船は届くと信じていた
マルルクが伝報船が届くことを信じていたのは間違いないでしょう。ただしお祈りするような気持ちだったはずです。
深界四層から伝報船をとばすのとは違い、深界二層からならば地上へ届く確率は高くなるはずです。とは言え、その後の伝報船はというとオニタチキリの群れに襲撃を受けます。伝報船が無事にナットの元へ届いたのは、やはり偶然に過ぎないと言えます。
結論
マルルクがリコたちの手紙を再出発させたのは、マルルクがリコの友人だからです。
赤笛リコの手紙の内容は、ほかの探窟家やオースの街の人々にとって有益な内容はありませんでした。リコに関係のない人々にとって『無価値』とも言えます。
しかしリコの友人達にとっては『価値』があります。リコの無事が確認できるからです。
マルルクはリコの友人だからこそ、伝報船の修復こそ手伝うものの、そこから先の伝報船の旅そのものは手伝わなかったのです。
それはマルルクが、シーカーキャンプを旅立つリコたちを見送った時の心境と同じでしょう。
手紙をほかの探窟家を頼ることだってできたはずですが、そうしなかったのはこの伝報船の旅がリコたちの旅そのものを表しているからです。
深界一層での謎
リコがレグを見つけた『あの場所』に伝報船が辿り着いたのはなぜ?
そもそも伝報船の仕組みはこうです。
メイドインアビス1巻背表紙の情報です。ちなみに『電報船』と書かれていますが誤りで、『伝報船』が正しいようです。
ガス式は、植物のタネの性質によって『都合よくオースのある地表近くに留まる』そうです。
『ある地表』というのがちょうどレグを見つけた場所あたりなのだろうか?
もしかすると力場の影響などで必然的にたどりついたのだろうか?
それともあくまで偶然。アビスの呪いは同時に祝福もうけているからだろうか?
伝報船がこの場所に辿り着いた理由はわかりませんでした。
しかし、ナットがいた理由というのは推測できます。
そもそもナットはリコの近くの探窟担当でした。レグを見つけた場所から比較的近い場所で探窟作業をしていたと思われます。伝報船が飛んでいることに気づき、周りの仲間にも呼びかけて伝報船を回収しにいった。
そう考えるとナットと、もうひとり別の探窟家が一緒に行動したことにも説明がつきます。
ナットと一緒にいる探窟家はだれ?
ナットがリコからの手紙を受け取ったときに、もうひとりが駆け寄ってきています。ナットと背丈は同じくらいなのでベルチェロ孤児院の仲間でしょう。気持ち的にはシギーであると嬉しいのですが、違うと思います。
理由は2つ。
1、シギーならば顔をうつさない理由がない
2、シギーは以前の探窟ではより深い位置を担当していた
基本的にベルチェロ孤児院では探窟に慣れている位置に配属されます。よってナットとシギーが一緒にアビスに潜るということは考えにくい。
結局だれかは不明ですが、シギー以外の誰かということでしょう。
オースの街での謎
オースの街の状況は非常に不可解です。
1、街に人がいない
2、トコシエコウの花びらが街中にしきつめられている
3、建物のガラスが割れている
今回の考察でもっともとんでもない考察になります。原作コミック6巻の内容も含みますのでご注意ください。
オースの街の異常(人がいないこと)が描かれている
・街に人がいない
・トコシエコウの花びらが街中にしきつめられている
・建物の窓ガラスが割れている
この3つに注目してご覧ください。
いかがでしたでしょうか?
ナットともう一人の探窟家以外に人の姿が一切描かれていないんです。
加えてトコシエコウの花びらは、お祝いの日や葬式の日に撒かれるということがわかっています。
もしお祝いならばもっと人がいて然るべきです。
この時間帯にオースの街に人はいないかと言われると、それははっきり違うと言えます。
それはアニメ1話で描かれています。こちらもアニメオリジナルとなります。
まず時間帯についてです。1話オープニングも13話エンディングも太陽が右側から照らしています。夕暮れ時と考えて良いでしょう。くわえて両者ともナットが探窟からオースへ帰ったときの時間なので、ほぼ同じ時間帯といって良いと思います。
そして同じ時間帯ですが、1話オープニングでは人の姿がしっかり描かれています。トコシエコウの花びらは道に敷き詰められている様子はありません。
13話におけるオースの街の異常についてのわたしの結論
人がいないこと、大量のトコシエコウの花びら、割れたままの窓ガラスはすべて『死』によって説明がつきます。
人がいないのは死んだから
大量にトコシエコウの花びらが舞っているのは、死んだ人の数
窓ガラスが割れたままなのは住人がいないから(割れた理由についての考察は後述します)
よって私の結論は、アニメ13話時点でオースの街は壊滅に近い状況に陥っている、です。
原作6巻でオースで起きている異常が描かれている
原作6巻で、おびただしい数のトコシエコウの花びらを目撃するレグの姿が描かれています。オース(およびアビス)になんらかの異常が起きているのは疑いようもありません。
この少し前にオーゼンとジルオの会話があります。ジルオが『誕生日に死ぬ病』についてオーゼンに聞きにきたときのシーンです。
オーゼンは、どうしようもなけりゃ祈る他ないし、さもなきゃアビスを捨てて逃げると言っています。
逃げるか残るかを家族間で争った場合、熾烈な争いになるでしょう。おそらくこれが窓ガラスが割れた原因と考えています。
なぜナットは無事なのか?
上記のようにオースの街が本当に壊滅に近い状況ならば、次に考えるべきは「なぜナットともう一人の探窟家は無事だったのか?」です。
わたしは「ナットも無事なわけではない」と考えています。
オースの街では『誕生日に死ぬ病』が観測されていました。
ジルオの証言
まず孤児院のリーダー ジルオの証言です。
キユイの前に孤児が二人、誕生日に死んだ。そして誕生日の分からない孤児が5人死んでいる。
ジルオの言葉からは『孤児』がキーワードの可能性もあります。しかしオース全体の問題と考えると、おそらくは孤児だけでなく『子ども』と範囲が広がると考えています。
ラフィーの証言
『お得意さん』というぐらいならば基本的には大人でしょう。こうなると子どもだけではなく大人も呪いにかかると考えるべきでしょう。
誕生日に死ななかった人の話がでてないのでわかりませんが、もし誕生日に100%の確率で死ぬのであればウワサに留まらないようにも思えます。おそらく誕生日に死ぬ人もいれば死なない人もいるのでしょう。
今後の対応
このような原因不明の現象が起きた場合、オーゼンが言うように、人は逃げるでしょう。
しかし逃げない人もいます。それが探窟家たち。アビスに魅せられたものたちです。
このままでは、いずれ(あるいは1年以内に)ナットやジルオも原因不明の病によって死ぬでしょう。しかし絶望ばかりではなく、解決策はあります。アビスを捨てることです。
でもジルオたちは逃げないでしょう。
こんな風に考えているからです。
私の結論
1、『誕生日に死ぬ呪い』によってオースの街の人々が死んでいっている。
2、そのため探窟家のようなアビスにしがみつく人を除き、街の人々はアビスを捨てて逃げた
3、オースに残った探窟家たちは葬式としてトコシエコウをまいた
4、割れた窓ガラスは家庭内で意見が割れた結果
さらにさらに考察(妄想)する
誕生日に死ぬ病とお祈りガイコツは間違いなく関係があるでしょう。
わたしはお祈りガイコツの正体を、生き残ったものたちが、死者を火葬した後に遺骨を組み合わせてお祈りポーズにし、服も着せてできたものと考えています。
レグが掘り起こしたお祈りガイコツは、箱のようなものにはいっていました。これを棺桶と考えると、生きたままお祈りポーズしつつ棺桶の中で死ぬのは非常に苦痛です。発見されるお祈りガイコツが、すべてこのポーズでいられるものではありません。
なんらかの土砂災害で埋もれたのであれば、お祈りポーズは崩れるでしょう。
全員がお祈りポーズをとっているのは、生き残ったものが遺骨をそういう風にして埋葬したからと考えるべきと妄想しています。
現状では『誕生日に死ぬ病』はアビスの呪いとしかいいようがありません。子どもが先に死ぬのは、アビスの呪いに慣れがないからではないだろうか。いずれジルオなどのベテランの探窟家も死に至る病と考えています。
最後に
メイドインアビスは原作コミック、アニメともに傑作だと確信しています。アニメ2期が非常に楽しみです。
しかしメイドインアビスについて考察されている方があまり多くないように感じています。ぜひ私の拙い考察ですが、なにか御助言をいただけますと大変嬉しく思います。
どうぞよろしくお願いします。
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