歯磨き粉、マウスウォッシュ などの口腔ケアグッズの効果について否定的な意見を取り上げる理由について

豆知識
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こんにちは。歯科医師のにこです。

当ブログでは薬用歯磨き粉やマウスウォッシュ、キシリトールなどについて否定的な情報を取り扱うことが多いです⇨キシリトールによる虫歯予防効果はほとんどない

これらの記事は「誰の得にもならない」ことは承知しております。

なぜならキシリトールにむし歯予防効果がない情報が正しかったとして、むし歯になりにくい甘味料であるには違いなく消費者にとって大きなマイナスにはならないからです。

むしろキシリトール関連の商品が売れなくなってしまえば経済面ではマイナスになるかもしれません。

重大な健康被害が伴うのであれば大きく声をあげるべきですが、「誰の得にもならない」情報に価値があるでしょうか?

もちろん私は価値があると考えています。

そこで今回は

・歯の健康に関する情報の種類

・口腔ケア商品について否定的な記事が多い理由

について述べていきたいと思います。

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歯の健康に関する情報の種類

歯科医師が扱う情報には2種類あると考えています。

1、エビデンスに乏しい(正解がない)情報

1つ目は、正解がわかっていない情報です。
「わかっていないということ」歯科医師と患者間の信頼関係に基づいて活用すべきと考えています。
しかし実際には、効果がわかっていないにも関わらず効果があるかのように伝えることが多くあります。
たとえばキシリトールのむし歯予防効果などです。しかし、この情報が誤りだったとしても重大な健康被害にはつながりません。

2、厳格にエビデンスに基づいた情報

たとえば「歯磨きはむし歯予防に有効である」という情報です。

「歯磨きをしなくてもむし歯にならない人」は確かに存在します。
ここで歯医者が「歯磨きをしなくてもむし歯にならない人はいるから、歯磨きはしなくても良いです」と言ってはいけません。
なぜなら歯磨きをしないとむし歯になるリスクが高まることがわかっているからです。
間違った情報は健康を害することにつながります。

情報の使い方

間違った情報だとしても害になるものとならないものがあります。
しかし害にならないとしても、間違った情報というのは人類の利益にはなり得ません。
たとえばキシリトールにむし歯予防効果があるかどうかはよくわかっていませんが、フッ素のむし歯予防効果はあることがわかっています。
国家が国民のむし歯予防に費やす費用をどちらに多く割くべきでしょうか?
厚労省はエビデンスについて理解しながらも、民意を重視して予算配分・政策決定することがあります。
できれば間違った情報に踊らされることのないように努めたいと考えています。

口腔ケア商品について否定的な記事が多い

わたしは普段の歯科治療においてもエビデンスに基づいた治療を心がけています。当ブログにおいてもそのように心がけています。

ここでは、当ブログにおいて口腔ケア商品について否定的な記事が多い理由について述べていきたいと思います。

1、そもそも歯磨き粉もマウスウォッシュもお金儲けのために作られている

みなさん、お金は好きですか?わたしは好きです。

企業はお金を稼ぐために商品を販売しています。

健康にとって良い商品ももちろんありますが、中には健康にとって良いかどうか不明な商品もあります。

「割高だな」と感じる口腔ケア商品はたくさんあります。企業としては、お金>健康 です。

経済を回す上でこれらの企業努力はあるべきですし、そのようなサービスや商品を販売していくこと自体は自由だと思います。

「金儲け=汚い」ではないと考えています。

とは言え、むし歯の予防に有効性が確立されているのは今の所「フッ素のみ」です。殺菌成分などは「おまけ」にすぎないといったことや、歯周病に効く薬効成分はいまのところないこと。これらの事実は表立っていわれません。

歯磨き粉やマウスウォッシュでは歯周病は治療できません。ですが、歯周病に効くかのように表記することが認められています⇨【薬用歯磨き粉をぶった切る】価格の高い「歯医者おすすめの歯磨き粉」に価値はあるのか?

これらの情報はお金の節約にはつながるかもしれませんが有益とまでは言えないかもしれません。また今はまだわかっていないだけで本当は効果があるのかもしれません。
つまりエビデンスにかける情報です。エビデンスにかけている分、お金は節約しても良いのではないでしょうか。
このあたりは、消費者の選択の自由と考えます。
しかし論拠に乏しい商品で荒稼ぎをすることには反対です。

たとえば「機能水」と呼ばれる効果不明の「水」の販売とか、無駄に高額な歯磨き粉とか、某Youtuber監修のホワイトニングだとかです。これらは一部の魂を売り渡した歯科医師がグルになっておこなっているものです。

以下に挙げているように歯科医師の立場を貶める行為だと考えるからです。また消費者にとっても健康被害とまではいかないまでもお金をドブに捨てるようなものとも感じています。

2、歯科医師の自由な経済活動や医療行為の裁量権を守りたい

効果不明の「水」の販売とか、歯科医師おすすめの高額な歯磨き粉やマウスウォッシュ 、某Youtuber監修かつ歯科医師がらみのホワイトニングなど、専門家にとっては変な情報でも、それ以外の人には見分けがつきません。

しかし間違った情報での金稼ぎは、批判および国の規制につながります。

ひいては歯科医師の自由な経済活動や医療行為の裁量権が損なわれます

歯科業界を守るためには、エビデンスに基づいてすすめることが重要だと考えております。

歯科医師は頭が悪いと思われるのが嫌だ

不十分なエビデンスに基づく医療情報を容認することは、歯科医師の倫理観や信頼性が損なわれると考えます。

むし歯の予防効果について「フッ素」と「キシリトール」を比べてみましょう。

フッ素に関してむし歯予防効果があることは信頼性の高いデータがでています⇨フッ素塗布の有効性と危険性について

キシリトールにもむし歯の予防効果があるというデータがありますが、信頼性に乏しそうです⇨キシリトールでむし歯は予防できる?

仮に「キシリトールのみ配合された歯みがき粉」と「フッ素のみ配合された歯みがき粉」のどちらを買うべきかを考えた場合、当然「フッ素のみ配合された歯磨き粉」を選ぶべきです。

これはエビデンスに基づいて明確です。

しかし「キシリトールでむし歯が予防できる」と一度世間に浸透してしまった情報を上書きすることは難しく、未だに消費者はどの歯みがき粉を選ぶべきか悩み続けています。

キシリトール歯磨き粉はまだマシです。

世間ではハチミツでむし歯予防ができると提唱している人たちがいます。そして歯科医院でもそれを支持しているところがあります⇨【マヌカハニーの嘘】蜂蜜がむし歯・歯周病を予防できるのかどうか徹底解説

さて「ハチミツ歯磨き粉」と「フッ素配合の歯磨き粉」どちらを選びますか?
個人が費やせる時間には限界があるため、専門性の高い歯科医師が判断すべきです。
個人が根拠に乏しい情報に基づき誤った選択をすると本来得られるはずだった予防の機会を失うことにつながります。
わたしの主観ではありますが、ハチミツをむし歯予防に推奨している歯医者のブログをみると「ちゃんと勉強した結果の判断なのかな」と不安に思ってしまいます。

年々膨張する医療費の問題

医療費は年々膨張しており国家予算を圧迫しています。
これを制御するためには「安心安全」「念のため効果がなくても」「良さそうなことは何でも取り入れる」といったことは控えエビデンスに基づいた費用対効果を求めるべきと考えます。

まとめ

・口腔ケアグッズに関して否定的な意見が多いのは、企業側の目的が「お金儲け」であり、そもそも健康に良い商品が少ないから

・「誰の得にもならない情報」も発信するのは、根拠のある情報を発信することで歯科医師の立場を向上させたいから
・根拠のある情報を広めることで年々膨張を続ける医療費の問題の改善に寄与したいから
以上になります。

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